ぃトン詩 集 vol.6_3(31〜45)

『つぶら、つぶらて』



*ボクが心を込めて描いた大切なモノたちなので
 無断で連れて帰らないでくださいねm(__)m

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31.『櫓座利尾-ロザリオ-。』

両手に突き刺したクサビは、
痛いか?

それではこぶしも握れまい。

つかみ損ねたものはあるのか?

別の痛みか。

それに気づけた幸運で、
おまえのくさびからは、
血のような涙が流れているのか。

では、
クサビ打たれた両足はどうだ?

もう、
しびれて、
何も感じないのか。

でも、
冷たさは感じるのか。

だから今、

その足先にとまり、
羽を休める蝶の暖かさは、
的確に感じているのか。

福音。

おまえの耳に、
聞こえ入る夏の訪れ。

おまえが今、
下を向いているのは、

その時に、
七色の炎の中で、
上を向くためだ。

祝福あれ。


〜2009.05.11〜


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32.『飴色の風景。』

舞い降りる瞳。
指先にやどり、
行く先をしめし、
風に消えてゆく。

あたまより、
まっすぐに心に
降り立つ絹糸は、
繭の残骸と和合する。

新たにつなぐ呼吸は、
心拍へと移り、
この心の移動がはじまる。

どこへ?

−そこへ。

かつて親しんだ風景に、
あえてするこの上塗りは、
ひときわそれを
鮮やかにかえすための作業。

青くうすい塗り材は、
心に染み入り、
繭となった生糸をほぐす。

飛び立った蚕が開けた、
焦げ色の口輪が、
それに溶けて気に変わる。

刹那、
ひとつ高鳴った胸の鼓動が、
ふさいでいた首筋を伸ばす。

広がる視界に戻る光。

行けるはずだ。
きっと、
あの風景の向こう側に、
新しく。

まだ乾かない飴色の、
風景に向けて、

まずは右足から、
出してみよう。


〜2009.05.12〜


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33.『にじむ曲線。』

線はひいた瞬間に、
にじむという事実。

この世界にある筆記具は、
すべて染料であり、
その質が、
視覚の認識を越えているだけだ。

線に幅を意識しない日常では、
にじみの広がりや、
千差万別のその形になぞ、
誰も気を遣る余裕もない。

移ろう機微の美学は、
むしろ悪辣なはみだしの
典型とすらなる。

誰もが
虹の消えゆく輪郭を
とどめたいと願い、

より鮮やかな境目の瞬間を
褒めそやす。

色はたえず移ろい、
そこにこそ、
美しさが宿り、
そこに呼応して
心も動くという連鎖には、
たいていの場合は
意識すら向けていかない日常。

この世界のあらゆる現象には、
始まりも終わりもない。

すべては移ろう形もたぬ命で、
形もたぬから、映るのだ。

わが朋友シャーリィプトラよ、

ルシャナの言質とて、
同様だ。

染料で刻む言葉も、
線として描く言葉も、

想いと同時にたなびく雲形。

捕らえた端から
柔軟に移りゆく色茶けなのだ。

一部の連鎖を、
鮮明な頂として、
まとめあげて認識しえる
こちらがわの能力にも
悲しみが潜むのかもしれない。

現象は、
固定された瞬間に、
まがい物へと身をやつす。

それでも、
そうすることでしか、
表現しえない美の共有化の中で、
相手と相手の出したい現象とを、
さぐる試行錯誤の繰り返し。

だから、
滲むを忌み嫌う美意識が、
通念化されて、
頭のやたらとでかい
一瞬を切り取った化け物が、
我々を洗脳しつづけ、
今がある。

その今も刻々と移り、
想いも時につきしたがって、
移ろいゆくものなれば、

流れるままに想いを向けよう。

決めつけず、
固定せず、
一点にとどめず。

フタをせず、
立ち止まらず、
歩き続けず。

刹那の反応に抗わず、
個を切り離さず、
ふたつに絞らずに。

すべての循環を受け入れ、
裸のままの自分を信じて、
この世界と同等の自分を誇れ。


〜2009.05.13〜


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34.『ははのかたに。』

ははのかたにことりとまり、

かなたからのことをかたり。


ちちのちいさなひとみにうつる、

そのははとことりのかたらい。

ことことと、
うたうはかたわらの
うみのむこうでうまれたにじる。

じゃがたらに
とりにくに
たまねぎ、にんじん。


たきたてのごはんをひとつぶ。

たびのほうびに
ついばむことり。


ちちのちいさなめが、
よりほそくなるえみしがた、


あおいよぞらに
ぎんいろのほしがまたたき、

やねのうえのもみのこずえに、

やさしいつきが
しずかにかかる。


〜2009.05.14〜


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35.『心凪ぎ。』

つかまえる轍の端くれに、
かすかな野花の主張。


そうだ。

そこだって、
立派な地球だ。


いつになく、
凪いだ心の先に夏山。


かたわらには、
金色に映える麦穂なみ。


嗅覚で知る愛する人のゆくえ。


手をひろげれば、
かわく手のひら、
揮発する熱、戻る体温。


のどの渇きには、
ラムネのガラスびん。


どこかの家の窓辺で鳴る
気の早い風リンに、
笑うまだ若い風。


緑の色分けが進む中、
目を閉じた自分の
耳が生きる。


ここだって、地球だ。

もちろん、
そこだって、地球だ。


なぞかけは、やめよう。
着飾ることも、やめてみよう。


そうして通す風に、
この肌色が変わるはずだ。


季節の渡りに呼応して。


ここで呼吸するのに、
ふさわしい自分が生まれて、
目を開けるタイミングが
わかるかもしれない。


〜2009.05.18〜


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36.『擬態。』

目を凝らして見つめる先には、
思いもよらない果実。


かつては知らなかった風景に、
改めて気づく匂いの微妙。
わずかな体温の不調がきたす、
結実に向かうことのない交配?


火照りと発汗の中で、
なかなか自分を掴めない苛立ちに
似せていけないその色、かたち。


ここで目立つのは美徳ではない。


ただひたすらに、
淡々と繰り返そう。

少し毛色の違う自分。
他から見ても、
自分からでも。

ここまで誠意をもって
似せれば充分だろう。
これ以上の色の違いは、
自分でも変えることの出来ない、
心の領域だ。


いずれはここを離れ、
急激に色を変えるだろう。

自分への約束だから。


今、閉ざしている視野を
開くその時までの、

自分なりの自分。


垣間見た、
斜め上の鏡には、
少しそっぽを向いた
擬態のイモムシが、

マスク姿で
ナイフを持って、
牛を切っているさなか。


〜2009.05.21〜


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37.『ムシボシ。』

陽なたに干す心の布団。
さまざまな棲みものに告げる
革命の予告。


ほぅら、
この風にまたがって、
旅に出ろ。


ここにいても、
君らを育てる糧はない。


ボクが君らから受け取った、
宝となるべき痛みは、
確かに血として、
ボクの巡りに加わった。


もう君らの役目は終わったからね
宙に気化して
その喜びにふくらんでいい。


このムシボシの記念は、
ここにコトバで記すから。

けど、
何で心は四角じゃないんだろ?


干しづらくて、難儀した。

それに、
斑点のような抜け穴には、
よほど大きな痛みが
棲んでいたのかな?


さてと、

大きくひとつ深呼吸。
ポロポロのふかふかになった
自分の心を飲み込んで、
そろそろまぶたを閉じてみよう。

早くも心の再生が、
音もたてずに始まっていく予感。


今日のおやすみは、
夜空の君たちに向けて放とう。


〜2009.05.21〜


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38.『ヒトミ。』

このひとみに映るもの。
そのみなすべて白い光をふくむ。

ふくらはぎに当たる風、
そこに心を宿し、
踵を上げれば縮む筋肉が、
次の一歩ですがしく伸びる。


繰り返し、
繰り返すその作業には、

どれも同じものはない。


繰り返し、
繰り返すその作業で、

光の当たる位置は変わる。


このひとみに映るもの。
そのすべてが自分に向かい、

出来たてのミクスチャが、
いちずの体温で燃焼し、
和語を彩るコトバのパズルで、
炎なき燃え上がりが
このカラダの要素をみがく。

きらめきの構成に、
応えるための習作は、
何度も何度も入れ替えるコトバ。

その無駄にも似た作業から、
やがて手に収まるひと粒が、
あなたと共有できれば、
ボクの命は七色の風になる。


〜2009.06.18〜


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39.『あなたに。』

朝もやの中、
みずみずしい草を踏む。

そのしいたげから、
沸き立つ息吹を知る人。


わざと。

痛むその端から、
やさしさの結晶が、
飛び立つのを見届けて。


笑顔。


こころからすがしく、

空気に加わる勇気を送る。


夏の草々は、
あなたのことが好きだ。


あなたが好きなのにも、
負けないくらいだ。


だから。


一点の濁りもなく、
さえ渉る競争の伸び。


あなたみたいな人が先生なんだ。


教室にはおさまらない角度で、
運動場を越えて走る。


ボクらをつかまえないくせに、

つかまえてしまう人。


いつか。


追いつきたいな。

あなたと肩組んで、
叫んでみたい。


大地から、
手を出して!


もう少したったら、
ボクが呼ぶから。


〜2009.06.25〜


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40.『展開図。』

こころを広げてみる。
真四角なんかに、
広がるものか。


どこが角かもわからない。

ましてや綻びの先なんて。


どこにでもある展開図。
ここにしかない展開図。


端から立つ熱気こそ、
求めてやまない「しるし」

きっとそこから、
足が生えて、
水かきも。

器用に。


千にひとつの無駄もない。


ボクらの呼吸の約束は。


あなたは見たのかもしれない。


ほころびの先から、
飛び立つ不器用な折り鶴の、
あどけない照れ笑い。


だから、
先に開いた?


自分というカタマリを。


連れて行ってもらえない
もどかしさの瓶の中に沈殿する、
ボクという澱粉。


その白い濁りこそ、
観てほしかった、
ボクの足跡。


次のひとつに
いないあなたの、
足跡がそこにつく。


たゆたう群れは、
海渉る蝶の仕切り。


どの蝶もが
必死にもがいている。


その先にあなたのてのひら、
世界でひとつの展開図。


おやつは、
300円までだったよね?


〜2009.06.26〜


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41.『ことり。』

取り乱すまでもないやさしさ。
今日も雨降りの窓辺に置く。


この天気はいつも、
こころの道筋を鈍らせる。


色のトーンの節約された大気。
つま先だったことりのしぶき。

ピアノの雨だれではなく、
煮沸する音。
アスファルトですら、
冷え込んでいるというのに。

ふつふつと這い回るような、
水のしずくの熱もつ生気が、
そこいらじゅうを鷲づかむ。



描きかけのキャンバスの、
真ん中の大きな月は、
うす水色の円のままで、

さらにパステルを
重ねる億劫が、
湿気たコーヒーの薄味の
湯気の向こう側にタムロする。


ジンのシトラスの、
わざとらしい甘味。

勝ち誇るチーズの、
端の乾いた固形乳。


その先をたどる視線が、
点線となり、
渦を巻きうずくまる。


こんな日は、
誰もがことりだ。

カラダじゅうに、
雨のしぶきの粒を身につけ、
ひっそりと首を埋めて、
自分の中に、
愛をさぐる。


その静かな作業の先に、
まばゆい原色の
色鮮やかな大地を期待して。


こころにたまった異物は、
やがてひとつのカタマリとなり、
吐き出せば道端の石と化す。


その石が、
いつか夏の気紛れ風に、


人知れず、
ことり、と
音を立てて歌う。


〜2009.07.06〜


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42.『ゆめみ。』

君と過ごしていたのは、

夢だったほどの楽しい日々で、

夢だったほどのつらい時も多少。

みんな時の風に流れていったから

時として気紛れにたち戻る。


君との時間に関しては、
ボクは誠実だった。


一点の陰りもなく、
確かに君を抱きしめていた。


それまでの、
たくさんの罪も過ちも、

洗い流そうと、
このカラダに砂をもみこんで、

土砂降りが来るのを
待っていた。


消えない垢があったけど、
君に向かう気持ちで
洗い落とそうともしていた。


君がいなくなって、
自暴自棄を越えてから、

その垢が消えてくるなんて、

嬉しくもない寂しさで、
寂しいけれど、
ほんの少しの嬉しさだね。

もう今ではすべてが夢で、
これ以上の修復も、

新たに君に触れることも、
君に向かうこともない。


ただ、気紛れな風が、

時折胸にあたっては、
思い出せとせがんだり、
思い出すなと突き放す。


猫のような状況が、
今のボクのうしろだて。


もう、引っ込抜いた釘。


錆ついた痛々しい曲がりは、

二度と使わない約束のしるし。


でもその曲がる先の方向に、

ボクは歩いている。


いちど熱意で交差した証しは、


その愛の糧から、
行き先をもたらす。


二度と君に会いませんように。


知らなくても、
耳にしなくてもいいから、


どうか、


君が笑顔でいますように。


〜2009.07.09〜


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