ぃトン詩 集 vol.6_2(16〜30)

『つぶら、つぶらて』


*ボクが心を込めて描いた大切なモノたちなので
 無断で連れて帰らないでくださいねm(__)m

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16.『かぐや。』

かぎまほしき
かぐわしき、
君のいろ。

そにふれずとも、
あふれたつ。


時つ折りつの
あたたけさに、

ほどける愛形、
こぼれ出て、


語らうこころ、
染めし今。


さだまらぬは
春のことわり。


さても
たがそぐか、
たそがれに、

みたびの涙が、
散ろうとも、


君が香にたつ
旅立ちを
知りてやがては、
弾むこころ。


〜2009.03.30〜


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17.『思い出してください。』

思い出してください。
結婚した頃を。

お互い、
唯一の不思議な他人だったことを。

話さないでも、
相手がわかる、
自分のいのちに重なる感覚。

横でたてる、
呼吸を意識できる人。

まず、
相手がいて、
それから自分を生きていた。


子供ができれば、
呼吸の意識は、
子供に移る。


それは当たり前の愛。

ふたりの呼吸を、
分けた食卓の宝なのだから。

やがて、
相手にうとましさを感じる。

それも当たり前のこと。

呼吸がひとつ移り、
子供が間に入ったのですから。


でも、
正しく受けとめてください。

その呼吸はいつか、
離れてゆくもの。


あなたと
あなたの愛する人の、
食卓に立ち寄った、
旅人なのだということを。

そうして、
戻してくださいね。


ふたりの
呼吸の有り難い事実。

あなたが選んだ、
唯一の不思議をたずさえた、
愛おしき人の存在。


旅立つ日、
旅人の娘、息子より。

心をこめて。


〜2009.04.02〜


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18.『itawa-ri-いたわり。』

素足に指を添える。

つま先に希望。
かかとに愛。

つかの間、
休息する血流が、
その周辺で欠伸をかく。


少しだけ、
落ち着きを取り戻した体温。

安心の夜風に、
横たわる心臓。

聞き耳をたてれば、
クスクス笑いの、
過去の少年。


遠い記憶にふれるまつげ。

あの秘密基地に
置き忘れたノートには、

好きな子の名前。


春さきの風はやわらかい。


まぶたを閉じてみよう。


きっと、
ボクの心は、


すぐ来る麦穂の波渡る
風に遊ぶとけ色。


いつまでも、
君に寄せていく金色。


〜2009.04.06〜


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19.『多彩なねじり飴。』

何度も何度も擦り切れる心。

とりつくろう端から、
挽かれてゆく自分。

あなたもそうだ。
ボクも。

こんな時代に立っている。

互いが、
相手のことを気遣って、
自分を捧げているのに、
すべてが逆に吹く風に湿る。


どこかで破綻をきたした純白。

日々、崩れ割れてゆく石膏。

ねばつく悪意に、
闊歩する口角の泡。


手放した青い鳥の羽は、
無残にもむしられた、
マネキンよろしく、
今日もうすっぺらな
裸体を曝して虚栄に頼る。

こんな時代だからこそ、

心に色をつけよう。
声でその色を外に向けよう。

脆弱な色でなく、
野太い柱のような色。

足で立つのではない。
心の色で、
ここに「いる」のだ。

手をつなぐのではない。
色もつ声をぶつけ合うのだ。


そうして出来上がった
多彩な「ねじり飴」で、
時代をつらぬき、

悪意も善意もひっくるめて、
先をにらみ、そこへと、
ねじり飴を突き刺していくのだ。


誰もが持つ、
自分だけの色、
自分だけの声、


その大音量の合唱が、
こんな時代をすくいあげ、

径の計れない多色の円筒が、
やがてこの球体を飲み干せば、


そこに、新たな心が芽吹く。


〜2009.04.09〜


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20.『てのひら。』

このてのひらですくえるもの、
わずか。

このてのひらで握れるものも、
わずか。

だから、


何度も何度も、
ひらいて。
とじて。


とじては、
ひらいて。


ひらいて。
とじて。


とじては、
ひらいて。


ひらいて。
とじて。


とじては、
ひらく。


そうして、
ここまで、
歩いてきた。


少しでも、
やさしくて、
きれいな心になろうと。


うしろにとりこぼしてきた、
この身を切られるほど、
大切なもの。

もう、
つかみ直せない、
そのほほ笑みも、


思いをよぎる、
季節のめぐりの向こうで、
緑なびく草の匂いに、
広がって、


風となった。


今、ひらいたてのひらで、
その空気をつかむ。


自分の体温と、
重なるわずかなそら色。
やわらかく、あふれる勇気。


このてのひらから、
放射されてゆく勇気と、

この球体の地表から、
立ちのぼる熱量は、


たぶん同じ意味をもつ。


きれいになりたい一心。
やさしくなりたい一心。


今よりもなお澱みなく、
今よりもさらに透き通る。


そう、
決意した
ふたつのてのひらで、
この世界に合わさる
自分を知る。


ひらいて、
とじて。


とじて、
ひらく。


〜2009.04.12〜


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21.『ある事実。』

くだらない
屁理屈の先に、
いのち。


止むに止まれぬ衝動は、
遺伝の宝か?


書き損じた手紙に踊る、
見たくもないほど
自分じゃない字。


それが今の自分を物語るという、
過酷な事実。


事実にフタは出来まい。


跳ねた泥が、
手に一点の染みを作ると、
両手を泥の中にねじ込んで、
ぐしゃぐしゃに、
汚してみたくなる。


反動が、
一線を越え、
時が歪んで、
黒目が濁る。


曖昧さへの苛立ち。
狭い心への苛立ち。


内にむかえば、
外に出るみにくさ。


天上から、
吊るしたいような心臓。
砂を擦り込んでやりたい喉仏。


床に溶けたタールの中に、
目玉だけが浮いている。


〜2009.04.13〜


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22.『せつなきものたちへ。』

精一杯、生きろ。
この世界の空気を吸い込んで、
思い切り吐いて。


みな同じ、歴史を持つ。
些細な違いは、
時と空間と気候と契約。


同じ切符は一枚しかないだけ。


天の改札は、
誰もが等しく通過できる。


そのとき、
浮き足立っていたとしても、
それは、それ。
ふさぎ込んでいたとしても、
それで、いい。


ひとり、
妹の帰りを待つ兄の姿は、
どれも同じ切なさで光る。


抱き留めたいこの腕に、
自然につき出し宿るのが、
神とみまがうしるしなのだ。


ごく自然に、
なんのためらいもなく、
手を添える女陰(そねり)こそ、

当たり前のしぐさじゃないか。


誰ためらうことなく、
そうなる事実は、
すっきりと美しい。


だから、
いのちは、
つないでゆける。


しどろもどろになる屁理屈を、
大切にいだきたいという誠意。


駆け出したい衝動を、
相手に向けて、
ゆるめる勇気。


気づいたかい?


誰にも、
まだふくらませていない、
風船がある。


〜2009.04.14〜


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23.『くろいろ。』

すべてを溶かす、そのいろ。
あと戻り出来ない誠実。


打ち解けぬ闇にも。


すべての色がふくまれ、
凌ぎけずる浮き上がりを、
あまる力で、
収めおさえる。

くっきりと。

芳醇にも満たされた、
四角い沈黙の果実。

光を吸い、熱をため、
硬質な表面で
周囲の姿を跳ね返す。


くろいろの
含み笑いは、
奥深い意味をもつが、

語らない存在感が、
孤高の位置をまもり、
周辺の喧騒に
身をゆだねている。


きっと、


もうすぐ、


あるはずだ。


胚種が子房を尽くし、
くろいろの四角がほどけて、

色とりどりの種子たちが、
そのふくらみから、
はじけ飛ぶ感動が。


その時、
世界は、
少しだけ、
揺れるかもしれない。


〜2009.04.16〜


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24.『こほひい色。』

ふさいだ心を
やさしくいたわるのは、

熱く注がれたあめ色のたゆたい。


洋椀のふちを
かすかにすべり、
すぐに消えてゆく
白いほほ笑み。


喉を伝わり、
流れながら、
ゆっくりと自分に溶けていく。


くち元から鼻にかかる、
クセのある悪魔の爪で、

そこに取り憑く欺瞞をつかみ、
酸味と化して、
このカラダを
浄化していく過程で、


同化を遂げる
地球の裏側で、
実った不思議な果実。


これもひとつの出会いだと、
心の傷口が、
麻痺に酔う。


緑がためた毒の実。


毒は毒を知り、
溜めを矯めへと
横にすべりながら、
存在の意味を変えてゆく。


ほぅら、
やはり世界はメビウスの輪。

たどれば裏は表に合わさり、
表も裏へと身を隠す。


それにしても、
コロンブスは頭が悪いな、
と、

ふと思いつく。

足持たぬタマゴが、
立つものか。

そこにあれば、
それでいいものに、
あれこれ理屈をつけるなよ。



あはははは。


答えが出たな。


コロンブスの着ぐるみ脱いで、

そろそろ
2杯目を飲み干そう。


〜2009.04.16〜


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25.『いちの位置。』

いちから、はじめる。


そう、
思い立った足は、
ゆっくりと踏み出す。


少し湿った地面に、
陽がさしている。


揃いたての、
この緑を踏むのは切ないが、

それも切磋琢磨。


互いに痛み、
そして強くなりの繰り返し。


たぶん、
そうして道になる仕組み。


弱いという自覚。
自惚れに浴びせられる冷水。
鷲づかまれる心臓。


その渦中で、
速度をあげた脈拍が、
手立てを集め、
形作る新しい軌道を持った
自分のいろ。


いつになく、
気をもつなびく風。

肌が立つ感覚に、
息をつめて見つめる先。

意を決めるなど、
大層でない些細な迂回が、
やがて大きな曲線を描き、
予期しない経路で、
なりたい自分に向かう。


ここが、
新たな、いちの位置。



足先に、
ふれた小石。


それを
つまみ、

にぎる。


〜2009.04.23〜


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26.『わたげ。』

やわらかな、
白い球体が、

風の愛にふるえ、


ちいさいくしゃみで、
解き放つ夢。


たわいもない会話の、
ふとした沈黙をかすめて、

器用に舞い上がる、
不器用な旅立ち。


些細だからこそ、
胸うつ心地よさには、


たくさんの未来がつまる。

なんびゃくなんぜんと
舞い上がり、
漂う君らの中にいて、


いちどついたボクのため息が、

君たちのいくつかの、
行き先を変える仕組みなら、


ボクはもう少し、
慎重になりたかったかも。

でも大丈夫だ君たちは、
それでも自分で着地できるから。


やがて、

君たちが、
やわらかい綿毛をつける頃、


きっとボクはまた、
君たちの前を通り過ぎる。


多少そのボクの頭にも、
綿毛のような白髪が、
増えているかもしれないな。


〜2009.04.30〜


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27.『渡せない花束。』

それは
みず色のスターチス。

他の花に、
寄り添ってまとまる、
控えめな呼吸。


自分だけでも
じゅうぶんきれいなのに、
添え役にまわす人間の傲慢。


だが、
少しの我慢のつなぎを握り、
続ける努力に光る水晶。


一本とて、同じきらめきはなく、
どの顔もがさまざまに、
先端で光を放つが、

全体で、
いつのまとまりの表情をもつ。


置いたコトバ。
削ったコトバ。


そのどれもが、
ボクの想いをになう。


たしかに、
意図してたばねたもねではない。

むしろ、
無作為に近い摘み方で、
花束にした。

でも、
その見切りはいさぎよく、
最後に血色の
リボンでまとめてある。


このアトリエのれんげ台に、
静かに置いたよっつのまとまりは

やがての時をみつめ、
みずみずしさをたたえている。

いずれみんなに、
渡すために。


〜2009.04.30〜


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28.『反動-夏葉へ-。』

意を得た直後に、
すくわれる足もと。

絶えず来る、
波の押し返し。


嬉々として、
気づかないともえの対局。

気づいたほどに、
張りつめた、
真摯な自分をほめてやれ。


のぼる人間の真価はそこにこそ。


健全な弾性と、
ひたむきな身震いの産物。

それは成果と同位。


折れた骨の周辺に集まる勇気。


あえて、讃えよう。
あなたの、次の足先。


〜2009.05.05〜


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29.『かけひき。-ただなかのやっこへ-』

たぶん
自分のためじゃない。


いや、
ほんとうはもう、
そんなことはどっちでもいい。


あなたが、
もういちど、
元気に笑ってくれるだけで。


そのために、
あなたの手を握る。


こうして、
痛いほどに。


血が滲んで、
ふたりの血液が、
あわさればいい。


こんなにも、
愛しあえた軌跡に。



見つめれば、
ぼやける焦点に、
棲みつく新しい刺よ、


必ず溶かしてあげよう。


私には、熱、がある。
あなたにも、熱、がある。


息を吸い、
とりこむさまざまな想い。


それが、
いま生きるこの熱の糧。


強く立つ。

笑顔で立つ。

泣いても、
決してすわらない。


かけひきだ。


神は自分たちで宿す。


〜2009.05.05〜


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30.『えくぼ-ぐるへ-。』

ちいさいころ、
えくぼがほしくて、
たまらなかった。


じゃんけんで、
いくら勝っても、
かずちゃんのえくぼは、
ボクについてはくれなかった。


鏡を見つめて、
ほっぺたに針。


いちだいけっしんの、
外科手術。


ちきりと刺して、
涙があふれた。


もちろん、父におこられた。
でも母は、
さびしそうに笑って、
ボクを抱きしめた。


遠い昔、
まだ母が父と出会うよりも
はるかに昔の少女じだい。

母もおんなじことをしてた。


だから、


ボクは嬉しかった。


ボクのはぁとには、
母とおんなじえくぼがついた。


ちきりと光る、
やさしさのえくぼ。


〜2009.05.22〜


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