ぃトン詩 集 vol.4_5(61〜69)

『てにてのび』


*ボクが心を込めて描いた大切なモノたちなので
 無断で連れて帰らないでくださいねm(__)m

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61.『化身。』

たとえば今のこの指先。
蛇のように妖艶にくねりながら、
先を舐めまわし、
飲み込む。


たとえば今のこの喉仏。
まるでカラスの子守りのように、
血反吐が枯れるほど恋しい。

行き先。

ない。

強いては。



ならば、
この胸板のカンヴァスを
盾にとり、


行くかつま先の次に。


だとしたら、
置いてゆこう。

このいらないとぐろ。

いるから。

切実に焦がれるからこそ、

まどろっこしい、
この手立て。


さようなら。

ボクはもう、


君には帰らない。


決して。


だから、


覚悟して。


〜2009.1.30〜


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62.『夜明け。』

深い群青。
出し惜しみのブルー。

手放したくないまなむすめも、
やがて。

遺伝に組み込まれた発露に、
かたくなに抗(あらが)う
闇の真意を撥ね、

確実に光は明ける。


自然とは、そういうもの。
世界の意図は、
どこかでまとまる真糸。

そのみなもとを
知るものはいなくとも、

誰もがその先にのびる糸先。


目覚めれば空腹。
咀嚼すれば、発熱。

そして、発情の波。


けだるい粘液の相互付着に、
のけはぜる朝の陽光、
昼の嵐、
夜に鉛の肢体と、
研ぎ澄まされた心が依(よ)る。


さくら色の芯が、
充血し、
やがて黒ずみ、
時を経て気づく真の美。


汚く変わりゆくことこそが、
情けなくしわがれゆくことが、
どれほど美しいのかを理解する。


そののちに、
みな天を駆ける虹になる。

その虹こそが、
次の夜明けを引き寄せる。

〜2009.2.1〜


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63.『鬼気。』

本当は邪悪の微塵もない。

意識が遠退くかたわらで、
そう、思った。

赤も青もあるものか。
同じ血がかよう生身の化身。


悪意を立てて、
攻撃の的を射ないと、
気がすかない輩が闊歩する島国。


おまえのたくらみは、
邪悪じゃないのか?

コトバに窮するだろう。

悪意は、
ごく自然に、
日常の善意から出てくる。

善意を際立たせるための、
かぼそい善意の端の角質。
弱まった誠実のカケラ。


そういったものを
ないがしろにする強気の攻めも、
もちろん善意で、
若くさかんに気を吐く筋肉。


今だ、
おまえにとって代わるのはと、
無意識に「鬼」を作ってみせる。


勢いであしげにしても、
後悔が見えない速度に酔う。


相手の側面を見てごらんよ。

君に渡すやさしさをたずさえて、
寂しくほほ笑みながら、
丸めた背中が、
かすかに震えているのに。

覚えておこうよ。

勢い余るとは、
目が利かないこと。

真実に近づく努力に、
適切な判断を欠くこと。

そこに浮き上がる正義は、
しなりの欠けた棒にすぎない。


だから、
福は内で、


鬼も内。


〜2009.2.2〜


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64.『ふくらみ。』

たわいもなく稚拙なとんがり。


そのひとつが、手さぐり。

指の腹の先と、
くちびると、
吸いつきでつかむ感触。


萌黄色の乳頭に、
張りのある母の乳の丘陵。


そこから始まった生きる冒険。


何度も何度も、
その周辺に這わしながら、

起立した自分が歩きだす。


五線譜上に置いた音は、
たったの3つの、
いちばん出しやすかった感情。

満面の笑顔でも、
こらえられない憤りでも、
外聞無視の泣きじゃくりでも、

その3粒を駆使してきた記憶。



いつからか、
それに嘘が混ざり、

口をつかずとも虚があふれ、


他者のみか、
自分までをもあざむく混乱に、


鏡が必要となり、
左右逆の自分が、
あたかも真実を造り、
他者の間をすり抜ける。



世界のごった煮の管弦楽。
まぜこぜのシンフォニー。

誰もが、
世界の指揮者として、

鏡に映った自分の楽団を
仕切るためのタクトを振る。


思い出せ。


複雑怪奇なこの混乱も、
さまざまな嘘が踊る
楽譜の五線譜の足りない線も、

もとはあの、
ふたつのふくよかな、

母のふくらみから出ている。


トーン記号のとなりに、
最初に生(お)いた3つは、

決して間違いのない、
自分の「しるし」であることを。


それを掴めば、
ボクらの複雑な音の混ざりは、

そこかしこに、
散りばめられた、
その3つの広がりにすぎない。


その3つの音を、
探し、見つめ、
ていねいに色づけていけば、


ボクらの奏でる混乱は、
必要な嘘を盛り込んだ、
豊かな音のふくらみになる。


〜2009.2.9〜


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65.『日常。』

あたりまえの繰り返しの作業。

無味無感想に手がのびて。

さわる四角には、
殊めく発色もなく。

苛立つ鼻孔に、
淀むまぶた。



だが、
そこにいる自分こそ、
いちばん確かな、
きらめきをひそめている。


トビも飛ばない、
樹氷も舞わない、
灰色の建物の中での蠢きが、
毎日積み重なり、
時にまとまり、光を吐く。


みなもとは、ここ。


ここにこそ、
異質を産み出し、
異形をフラットにしみ込ませ、

旋律であなたをかくまう
真意持つ自分の「もと」がある。


ならば、
大切にしよう。


ひとつひとつの
作業も会話も呼吸すらも。


大半が倦怠と惰性の連鎖でも、
同じひとつはないのだから、

すくいとり、
つまむ糸から、
金色の繊維も、
うす紫の蝶も、
真緑の匂いすら、

立ち上がり、
ひき出せる刹那が
そこに隠れているのだから。


ていねいな指先に、
こうしたいと、
思う自分をこめて、
すくいあげていこう。


やがて、
本意持つその指先が、
まわりとともにきらめくように。


〜2009.2.18〜

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66.『あし先から。−ひのゆかへ−

また一歩、
つま先から。


最初のかかとつける前の、
息をとめた間合い。


ゆっくりと
放物線を描く、右足。


そうだ。


この足先をつけるまで、

私はどこにもいない。


ここにも、

そこにも。


産まれたての
赤ちゃんの間合い。


新しい季節の風にふれ、
世界の意味を詰める。


無心の色づき。


まだ、
依らない真綿。

風の向きのままに染まる。

やがて、


呼吸がよみがえり、
歩きだすまで、


詰めた息を感じていよう。

この鼓動が、
少しずつ高鳴り、
ほおが紅潮する夢。


この先の、
歩調に向けて。


〜2009.2.22〜

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67.『語らい。

ずっと、
離れている。


確かな手応えも、
ないままに。


いつも、
さびしくてたまらない。


壁に投げ掛けたメッセージは、

はね返り、
床に弾み、
あけてもいない窓から、


そこへと飛び立つ。


凍てつく空気に当たり跳ね、
三日月をまたぎ、
北斗を越えて、
しぶきに遊ぶ。



幾多の仲間が、
跳ね回る銀河。
足早に流れ行く、
真白い雲に似て、
たえず形を変えてはまたたく。


語らい。


白セキレイの尾っぽの返し。
ネコの額のすりつけ。
ヒトから溢れ出てくる涙。


それらすべてを、
飲み込むクジラ。


そこにも、しぶき。
勢いよくまとまった、
心の機微の跳ね舞いが、
みごとな宇宙をつなぎだす。


ほほ笑みが、
太陽に姿を変えて、
またひとつ、愛へと移る。


〜2009.3.1〜

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68.『ちぐはぐなモザイク。』

晴れた日の空の壁面。
貼りつけたムラサキの星型。

揺らぐ常葉(とこは)。
反射するアンテナ。
急な風に舞い抜ける
白いビニール袋。


悲しみはそこで終わり、
また別の悲しみも、
そこから産まれる。


だんだんと、
ムラサキ色が溶け、
薄桃色に滲んでも、


痛みの芯はそこに貼りつき、
決してどくまいと誓う。


頑固者の落ち武者め。


痛みなく残る奥歯の神経の残骸。

君の笑顔と髪の薫り。


風に伝い、
糸きらびかせる蜘蛛の渡りが、
おまえの傷口をふたつに分ける。


見事な切り口の外科手術。


そこから出てくる
水色のジャムは、

みずからの重みで、
ゾルからゲルへとうごめき、
やがて空の壁面に伝い、
不本意に流れ、
空の青をけがしながらも、
空色に馴染む。


これが世界の日常で、

巷では、

ぼやけたアイラインのくろずみに
抜けてくマニキュアのピンク。
サラリーマンの
灰色の背広の襟口の垢汚れに、
擦れた電車のシートの
情けない緑のビロードの泣き顔。


それらすべての剥離が、
世界に加担し、
夜空に昇り、
闇に今日も星を作る。


飛散した悲喜交々(こもごも)の
ねじれた舞いあがりが、
夜の上昇気流となり、
この世界のロンダリングを始め、
明日に戻す色の準備が整う。


我々が掴んだ世界の理屈など、
無に等しい体温で、
それでもそれらすべての体温が、

この世界を明日に向けている。


太陽は、
いつも大きな口をあけて、
笑っているだろう。


〜2009.32〜

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69.『新たなつみき。』

ことん。


また、ひとつ。


新たなつみきが、
上にのる。


意図したカタチでも、
望んだ色合いでもなかったが、


だからこそ、
ボクのサグラダファミリアが、
真摯な礼拝へと向かう。


今度も、
かなり悩んだすえのひとつみだ。

据える面、
側面の向き、
これまでのボクとの兼ね合い。


不本意も、
やがては馴染み、
自分の色にまとまるものだ。


みなみの愉しい悲鳴も、
しのけんの忙しいそぶりも、
さやの某大臣似の酔い方も、
古沢さんのため息も、
木村さんの妙ちきりんな笑いも、
おぢょちんの透明な歌声も、
りゅこマの発熱も、

全部詰め込んだ、
このカタマリ。


置いたあとに、
たぶん、


それまでのボクと、
溶け合うように、
内からの発色作用があるはずだ。


次にこの横に置く
つみきの予感も感じつつ。


〜2009.3.2〜

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