ぃトン詩 集 vol.4_4(46〜60)

『てにてのび』


*ボクが心を込めて描いた大切なモノたちなので
 無断で連れて帰らないでくださいねm(__)m

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46.『かたとき。』

まばたきとも、
せつなともちがう。

離れない、
忘れない、そのとき。


たえず自分に寄り添い、
たえず相手に寄り添う。


かたわらに、君。
いつも、手に手。

おたがい。


手にたまる愛。
指先からこぼれる笑顔。


すぅら、すら。


涙をすくえば、
悲しみだけがすべり落ちて、
てのひらには、
喜びの結晶が残る。


怒りを握れば、
痛みだけが吸い込まれ、
勇気のかたまりが生まれる。


すぅら、すらり、

すぅら、すらら。


かたわらに、君。
かたときも忘れない。


かたわらに、君の手。
かたときも離さない。


ちがうリズムの呼吸だから、
溶けあったり、
反響しあったりして、

らせんの楽曲にまとまる。


かたときがつなぐハーモニー。


すぅら、すら、
ちちちちち。

すぅれ、すれ、
ててててて。


このときをため、
自分がのびる。

このときをため、
自分がしなる。


いつにでも、
気持ちがもどれるように。 



すぅ、ら。


〜2008.11.24〜


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47.『すべる手― AKANE ―。』

意に反して
すべり落ちる指先。
追えない悲しみ。

光るのに。
これからも。


屈託のない笑顔。
ひらいて反る手。
駆け足と通る声。


あなたがいたから。


いなくても、時は回るけど、
いるからはずんだものがある。

機微ダンゴ。
交差する誠意に抜け目なさ。


好きだった。


だから。


ありがとうは、
棚上げにするよ。


次の呼吸まで。



かならず。


〜2008.11.25〜


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48.『静かな夜。』

雨上がりの水溜まり。
ゆっくりと時間をかけて
整えられた、
泥のなめらかさ。

きめの細かい、
ゆるがぬ美の典型。


このように感情を、
沈められないものだろうか?

おもての表情が、
周囲に与える安心と、
あいまって心の奥深く、
しっとりと固まる決意。

そのどちらもが自分で、
多面の表情が自然になじむ。


そんなことを、
うつら、
考えながら、
行くこの足取りは、
まだ浮わついている。


たった今の風に、
敏感に鳴る風鈴。

予想もせずに、
かかる虹色。

そして、
満天の星空。


吐く息白いこの部屋で、
毛布にくるまり暖をとり、
しずかに心を天井に映す。

貝殻モザイクの、
はめ込まれた色彩のような、
不ぞろいの色たちが、
ゆっくりとうごめいて、
それぞれの角にこだわりを持つ。

おしてつきだし、
へしてもどりを、
繰り返し、くりかえし。

収まりを探す。

なめらかな泥の上の
澄んだ水のあこがれのようだ、
まるで。

これから、少し。
今よりも少し。
先へと少し。
また少し。
さあ。
夢。

闇、
光り、
ついぞ、
果てない、
問答へと向けて。


らせんに、
指をからませて、

澄みゆく水と、
なめらかに向かう、
泥の音を聞いてみよう。


〜2008.12.01〜


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49.『今。』

晴れる空には予感がある。
水溜まりの轍の笑い。
樹木の水気の返り。

そして。

ボクらの心にも、
抜け出てゆく過剰な水溜。


つま先立てば、
うかがえる外の風。
やがて旅立つこの子。


弓張り月のそばの星には、
満面の自信がある。


いそぐことなど、ない。
ただ、自分でいよう。
この手、この足。
この首すじにいる。

かけひきなしのはだかん坊が。


さあ、ここを出よう。
今が来た。

明日へと向かう、
今が来た。


君にも。


〜2008.12.02〜


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50.『白い朝、青い朝。』

目覚めた窓辺。
静かで凍る空間に、
朝が、いた。


ゆうべの食卓の、
赤いさざんか。
シチューの黄色に、
刻んだパセリの緑色。

寝入る前の色の世界が、
落ち着きを納め、
集約された白い朝。

覚める前、
夢でガウディが踊り、
理屈のつかない曲線たちが、
美しく色を編んでいた。


だから。


今朝の白い朝は、
ことさらにまぶしくて、
ボクを一枚にして、
このベッドに貼りつけている。


じっとしていて。


しばらく。


ほぅら。


耳と鼻から、


青い朝が迎えにくるから。


ぺしゃんこになった、
一枚のボクに、
新しい空気を着せてふくらまし、


きっと、
この重たいフトンを
はねのける勇気を
朝食としてくれる。


食後のコーヒーは、
自分でいれよう。


今日の色の世界に飛び出す前に。


〜2008.12.03〜


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51.『冬の水辺。』

冬の水辺にたたずむ手足。
満ち足りる程の冷気。
微塵までもがきらめくつぶら。


こころ、ここで、また。


夜伽の暖は、忘れかけの尻尾。
暗闇に白くたなびいて。

覚めと眠りの境界が、
描くゆとりの曲線の不思議は、

朝の地に降りる靄(もや)。


ここに、いて。

吐息を聞かせて。

今はまだ、
目に映らない恋人。


そのゆび先をのばして。


かろうじて、
感覚の残るそのうちに。

ボクのコトバが、
せつなの爪の先を、
オレンジ色に変える不思議を、


ボクは待たずに研いでいる。


〜2008.12.05〜


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52.『ひと滴(てき)。』

葉さきに静かにたまる。
だれにも気づかれないで。

けれど、
その感知されない
ささやかなふくらみには、
刹那刹那の光が差し、
刻々とそこに虹がたまる。


わかっていたこと。
わかりたかったこと。

それでも、
わかりえないことも。


どれだけの小さな想いが、
ここに集まり、
どれだけ激しく、
うごめいているかなんて、
およびもつかない。


それがくやしくて、
握りこぶしにチカラを入れても、
光といっしょに、
そこをすり抜けてしまう。

目に見えぬ大宇宙。


やがて想いたちが臨界に達し、
ふくらみはたるみ、
とっぷりと落下する。



世界はその繰り返し。

無数のひと滴が、
地面に染み入り、
また離れて上昇して、
新しいつながりを持つ。


こんなにも不思議な事実が、
人知れず数を重ねるが、
数えることも、その意思もない。


内からも
笑いが込み上げてくるほどの
そのみごとな作業は、


価値もたぬ宝石。


ボクらも
その宝石で成り立ち、
その宝石を吸い、
その宝石を汚している。


循環の風のひとつぶて。


ほぅら、
今も、
しびれた感情、
麻痺した愛情から、
着々と切り離されて、
宙に舞い、地に吸われてゆく。


〜2008.12.11〜


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53.『あまかみ。』

その歯のたて方。

遠慮がちに、
遠慮なし。


指先にあたる、
なめらかな鋭角。

ぬくもり。

とっておきの心。



かつて、
こんな木漏れ日の戯れ愛が、

あった気もする。


今は熱もち、
かたすみで痛む指先。

そこからこの傷口に、
つながっているのだろうか?


静らかで、
何事も起こらない夜が、
明けの群青色を、
ゆったりとためている。


そこに浮かぶ笑顔が見たい。


ボクは、
何も悪いことはしていない。
そう断言できるから、

すべてが、
悪いことにも変わるのだろう。


たっぷりとした、
この群青色の重なりの中、

この指先からのびる、
ひとすじの薄ムラサキの糸が、


やがて、


すべての色をひっくり返し、

たくさんの色をちりばめた、
宝石の朝がやってくる。


その時にもう一度、目覚めよう。

君もボクも。


たがいに向けた笑顔を、
吸い込めあえるように。


〜2008.12.24〜


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54.『思いやりのパセリ。』

たとえば、
シチューの上に、
さりげなく色と香を添えている、

パセリのように、

ゆるやかに嬉しい、
思いやりになりたい。


見えていても、
邪魔にならないで、

なのに
温かさをつけたす。


地面にやさしい木漏れ陽。

やわらかく首をつつむマフラー。

自然に握ってくる手。

カップの中で回るミルク。


ありがちな、
けどありがたいゆび先だ。

物理的事象が、
現実の教科書ならば、

感じるこころは、
ボクらのノート。

あふれてくる。
あふれてくれる。



あ、

ほらまたひとつ。


木枯らしにふるえる街路で、

おじいちゃんの足元に、
孫のお古のくつ下と運動靴が、

笑ってる。


〜2008.12.25〜


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55.『百舌鳥。』

たたみかけるように
さえずらなければ、

きみはきみをたもてない。

きみのさえずりは、
けたたましく、

どんなときにも、
すべてきこえてくる。

聞き入れてもらうのが、
意図じゃない。

きみは、
空間をつきさし、
そこに自分を刻む。

挑戦なんだ。

舌ではなく、
くちばしを無数に残す、
その試行錯誤のブラームス。

ここにいる自分。
次にこうなった自分。
それからこうなる自分。

いて、いて、いて、いる。

存在は流れてゆく。
カタチはいずれ溶けてゆく。

風に楔(くさび)打つ熱意は、
水の循環を認知しない、
百の徒労かもしれない。


カワセミは水ひと突きで、
獲物をくわえ、

キツツキは、
連打で棲家の穴をもつ。


きみの目論みは、
いつも今で、
残るものすら流れてしまう。

でも、
いて、いて、いて、いる。


鳴かなければ楽だろうか?

ゆっくりと語れば、
楽しいのだろうか?


いや、
みつめよう。

いつか、
風に自分を刻み、

みなが、
それを見つめる時を。


いて、いて、いて、いろ。

いて、いて、いて、いる。

いて、いて、いて、い。

いてて、いる、いてる、いま。



ボクの舌は、いちまいだ。


〜2008.12.29〜


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56.『すらり。』

すり抜け方を競うのに、
蝶に勝てるやつはいまい。


彼らは避けゆく風に乗る。
すらりと。


次の風にも、
その次の風にも。


みごとな渡りだ。
まさに舞いの完成美。


だから、
彼らは、
ぶつかること、
を、
知らない脆さをもつ。

その不安が、
風に添う。

はかないすらり。


君が違えばいいのだが。


痛いのを避けるすべは、
底知れぬ痛みの恐怖を残す。


不安と恐怖は、
風ではよけられない重さ。


少しぶつかる勇気を持って。


そこに安堵を広げよう。

いいかい?
ぶつかるのは、悪じゃない。


ぶつかりながら、
加減をつかめば、

風がなくても前に行ける。


それを知れ、すらり。
不必要な風を飛び越そう。

すらり。

ひらり。


〜2008.12.29〜


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57.『贅沢なサラダ。』

宇宙というたなごころ。

手つかずの夢。

冴え渡る空を見つめていると、
未知の鉱物が、
きらめきながら、
降りてくるようだ。


広いという形容は、
限界をもつが、

さまざまな広さを持ちより、
つぎたした広がりが、
楽しい夢をくわだてている。


パッチワーク、
サグラダファミリア。


今朝食べた、
温野菜サラダのいろどりで。



そう、
宇宙はまるで、
愉快なサラダボゥル。


星ぼしのにぎわいは、
想いの深さをたたえている。


ぜいたくなサラダ。


それは、
ボクの体内のつぎはぎに等しく、
君のこころの量にも等しい。


どうせ数える気も、
量る気もないなら、

まったく等しいと断言できる?


見よう見真似の幼児がすくう、
スプーンの中の喜びも、

そこからこぼれて揮発する
無資格の悪意も、

みな等しい重さをもつ。


宇宙はきっと、
命のまぜこぜサラダで、

ボクらの、
こころというマヨネーズで、
和えられ、


そこに「あるふり」を
しているんだ。


〜2008.12.30〜


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58.『くれいろ。』

暮れ色になじむ、

この手。


君が編んだ、

手編みの夢も、


七色の毛糸玉。


ころがって、ころがって。


今日のジャズは、
雨垂れのピアノや、
パーカッションのトラックの
エンジン音よりも、

電線の唸りが強い、

チックコリアのカルテット。


タイムワープ。


焙煎の強い
ストロングの
ブレンドコーヒーに、

目の下の隈と、
軽く浮く脳の重さが、

まるで軽妙な逃げ口。


しばらくは、
煙草のけむりにからむ、
このうす青い時に、

自分をゆだね、
もてあそばれていよう。


〜2009.1.5〜


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59.『青い夢。』

夢をみた。
青い色の。

それは、
透き通るような青色ではなく、
少し緑色をたたえた、
トレース紙の向こう側で、
そこにとどまる大人びた色合い。

さりげなく
こころを癒す静まり。


そして、
確実な質感で、
こちらの意図を吸い込み、
成立している空。

ただ染まる、
ただ染まるそれに。


気がつけば、
無心で見つめていた、
大工の統領の仕事のように、

時を戻さず、
着々と自分に積み重なる
無自覚の感動の仕掛け。


胸のすく落ち着き。


ただ青に染まる。

自覚が訪れる前に。

染まりゆく自分。


やがて来て、
重なる色の意味など、
微塵も気にならず、
呼吸すらした覚えなく、
染み渡るひたすらに。

これ以上の深みがあるとは、
思えない。
けれど行き止まるはずもない。


そうか。

たぶんこれが、
「誠意」と呼ばれるものだ。


〜2009.1.7〜


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60.『空き缶。』

かつてはたっぷり、
満たしていてくれたんだね。

その中に。

ボクらの夢を。


ボクらが渇いていたのは、
ノドだけじゃない。

君があたえてくれた
世界の抽出も、

ボクらの渇いていた
こころにしみ込んだ。


ノドが鳴り、
こころが鳴り、
カラダじゅうが喜んだ。


少しヘコんでいる
今の君のわきばらには、
ハゲた塗料の傷跡。

ボクらの誰かがクチをつけた
君のアタマのふちは、
錆びてきているけど、

そうして錆びるのは、
決して、
かなしいことじゃないんだ。


君の粒や、
ボクらを作っている粒と、
同じモノも違うモノも、

君を包みに来てくれて、
君の中にもほら、

たくさん。

今でも君は、
満ちているし、
満たしてもいる。


満ちるのは、
満たされるのと、
同じカタチを持つ双子。


君のカタチが
じょじょに減るなら、
そのぶん君は宙に舞う。


だから。


またどこかで、
会えるかもしれないね。


ひょっとしてやかて、
ボクの隣に君、
かもしれない。


〜2009.1.7〜


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