ぃトン詩 集 vol.4_2(16〜30)

『てにてのび』


*ボクが心を込めて描いた大切なモノたちなので
 無断で連れて帰らないでくださいねm(__)m

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16.『次の愛。』

コトバに至らぬいたわり。
次へと引き継ぐ愛は、
さりげなく、地に刺さる。


突き上げる羽に、
光る蜜蝋、やわはだ。



やがてつながる、
知と哀のわだかまり。

いつでもそうだ。

そこには、血と智と恥があり、

愛と哀が藍色に舞う。


おしなべて。


凪は憂欝。


でも、情熱。


誰が見る?

夜伽のいきさつ。

その美醜を云々する前に、
手を広げて、
次来るいのちに乳をもち、

気高い糞尿にくちづけを。


ボクはいつでも、

精巣と卵巣のはさまで、
藍を刻んでいる時計。

青臭い乳白色の伽に自分を研ぐ、ひとり。


〜2008.08.13〜


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17.『非形(ひぎょう)。』

つまりここに馳せ、
地に滑り込む滝のよう。

確かに、
目の前まで押し寄せた怒濤。
足もとで、
いさぎよく消える。


何のために自分は、
それに向かったのだろうか?

その目的すらも揮発する、
夏の午後の睡魔。

灼熱。

渇く喉。

焼ける足。


不快と爽快のあいだに、
愉快をはさみ込む努力。


イタヅラニロウク。

イズニラ、

イニ、

ニ。


徒労、去に、児。


かたちのない子。


やはり、

軌跡が偶然を呼ぶ。


目を準備しよう。

刳り貫くのではなく、

涼しくただひと粒を、

見つける目とする準備を。


〜2008.08.15〜


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18.『ゆれいろ。』

さ、さ−、  さ。
せぁ、せ、せぁ。

よぎる竹林のまとまり、
去る夏に添え。



ジュッ。


はじけ消える
フライパンの上の熱意。


次はイチョウの実に宿る。


とめどない転形。
天恵のソナタ。


そこつなボクの腕は、
物覚え悪く、
耐える試行錯誤。


いつ言おう?

君を愛していると。


いずれ分かつ身のツミトガに、

添える後悔の合わせ手は、

今この場所で、
すでに出ている。



ユクナツヨ、ユクナ。

クルアキヨ、コイ。



そうして頭打ちに、
つかえる季節のわだかまり、

まざり、色をつけろ。


典型の世界、
ボクも飲み込め。


〜2008.08.20〜


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19.『はだし。』

いつからか、
逆さまに見ていた夢に、

いきなり気づき、
いきなり涙あふれた。


なんであの時、
ああできなかったのか?

なんであの夜、
君をはなしてしまったのか?

誰にでもある、
抱けない自分。

誰にでもある、
崩したいカタチ。


昨日買ったサンダルに、
合わせたい足元がないならば、

いつかもらったTシャツに、
よろこんで通したこの両手で、

そのサンダルをわし掴み、
歩こう  はだしで。


感じる地面の熱に、
デコボコに、
今の自分。


それが君の、
それがボクの、
これからを生きるしるし。

きっとつながる。
会いたい自分に。


サンダルを強く、
握りしめて、
さがそう君を。

そして、ボクを。

これから。


〜2008.08.21〜


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20.『泥のわだち。』

雨あがりの、
濡れたアスファルトに、
泥のわだちが残る。

どこかの側道から、
名乗りをあげた、
金色の泥のわだち。


等間隔の、
美しい歯車の軌跡。
空に向けて、
とがった泥の子なめらかに、

道に添う風にからだ、休める。


やがてたくさんの、
ゴム輪に、
轢かれていく理解。
潰されていく理解。


胸押され、
心にくさび打たれ、
それでもなお、
道全体を見つめる。

見えるかぎり、
黄金のわだちは続く。
堂々と、
アスファルトの先に、
自分という模様を刻む。

傲慢の熱を空へと逃す。

見てごらん。
揮発する人間の空回りの先には、

はっきりと虹がかかっている。


〜2008.09.05〜


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21.『涼しき現代。』

やみくもに煙が立つ。
何を燃やしているのだろう?

対岸の土手には、
ひからびたカエルの白い腹。


蝉が天を仰いで果てるのはわかる。

ずっと地中にひそんでいたから。


けれど、
なぜ、カエルが腹を曝す?


蝉のシカバネは昇華しても、
対岸の煙は、
世界との融合を拒む。


強引に結びつけられた金属は、


気体となるすべを持たない。


かわいそうな命。
果てない自分の中の悪夢。
現実に残る不信感。


内包された赤子の希望は、
母が守ってくれるという前提に、
純粋経験の綱を持つ。


ならば、

母不信の赤子の出先など、
くわえる道筋もなく、
産まれ出た瞬間に、
ジレンマに陥ってしまうのに。


気づけ。


気づいたフリじゃなく、


ちゃんと気づけ。


消えない対岸の煙は、

ボクたちの足元の狂った母親だ。


〜2008.09.05〜


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22.『ヒゲ。』

目の前の水銀灯が、
ゆっくりと灯る。

それを見届けながら、
ヒゲを剃る。


今日も、
伸びたヒゲの分だけ、
後悔の呼吸を重ねる。

剃るヒゲの分だけ、
それを切り捨てる。


この世界に無駄なものなど、
何もない。


世界のいくつかが、
縁あってヒゲとなり、
このクチもとに生える。

ボクがこの世界に生えたように。


クチもとに残る
チクチクした雑感は、

忘れてしまう寸前の、
ちいさな勇気。

毎日つないでゆくもの。


次におまえは、
何にまとまり生えるのだろう?


誰かの爪になるのなら、
相手のしあわせにふれてから、
切られてほしい。


どこかの花になるのなら、
蜂や蟻に蜜を与えてから、
実を結べ。


誰かの涙になるのなら、
つらくても、
キッカケをつかんでから消えろ。


そしてボクに戻って来るのなら、

今度は死ぬまで離れぬ骨になれ。


〜2008.09.06〜


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23.『誓い。』

おふくろへ。

今度息子になれたら、
迷惑かけないデキた子になるよ。


おやじへ。

おやじが元気に飲めるうちに、
毎晩晩酌につき合える、
そんなオトナになるよ。


あははは…。

親への想いは詩になんねぇや。


〜2008.09.09〜


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24.『壊れる密林。』

傷むと、いうこと。

痛むのではなく。


なぜ腐臭は鼻につのだろう?
イヤな匂いとして…。


自然に戻る前のそのエネルギーは、
なぜ、負に向かうのか?


気か。


気があらがうのか。


大好きだった生徒の名前が、
今日は思い出せない。


〜2008.09.18〜


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25.『遅咲きのひまわり。』

まだ少し暑い陽なか。
時折りの風が含む冷気との、
微妙なこの丘に、
遅咲きのひまわりが揺れる。


戸惑い、
遣り過ごしてきた灼熱。

周りに合わせた
伸びへの嫉妬。
上手に吸い上げられない
維管束への戸惑い。
揶揄する
羽虫たちへのいらつき。


やがて越えたいくつかの野分の先に、

気づいたら、
頭ずっしり咲いていた。


心地よいその揺れは、
淋しさと重なっているのだろうか?


おまえが問いかける仲間は、


いた。


ひまわりだけが、
仲間ではないという
世界への旅立ち。


それがおまえを

かつての
ひまわりたちのもとへと
導いてくれる予感もともなって。


〜2008.09.23〜


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26.『コスモス。』

繊細な色合いの機微。
あどけない水彩画が、
寄り添いあい、揺れる。

その足もと、
かぼそい立ちなみの
すき間から通る風は、

昨日とこちらをつなぎ、
明日へとのびる刺繍の糸先。


それぞれに違う痛み。


伝わるときにつなぐ手、離す手。

見つめる目、そらす目。


きっと、
そのどれもが自然にもつれあい、
コスモスが咲く。


血が通う。
病める大地の脈拍。
吸い上げる細い糸すじから、
それぞれの、
かすかに違う愛が咲き、
空間に心を放つ。


空に向けての、
自分にしか編めない編み方で。


ちいさな宇宙が、
静かに産まれてゆく。


〜2008.10.05〜


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27.『てにてのび。』

沈む心に、
てにてのび。

すくう生糸の
あさぎ色は、
そのてのひらで、
弱くふるえる。

このあたたかい陽にかざし、
このやさしい風にふれさせ、
静かに、
いきいきを見つめる。


もし、
この陽と風で、
乾ききり、
さらさらに旅立つのなら、

それもそれ。


さらに沈む心に、
てにてのび。


くりかえすこの作業。


進めぬのなら、進むな。


ただただいきいきと
さらさらを放て。

てにてのび。
それはそれ。


てにてねび。
それとしれ。

どこかで気が差す。
この作業の先。

そこに置ける笑顔。


〜2008.10.07〜


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28.『届け。』

届け。
ボクの想い、誰かに。

量れなくても少なくはない。


届け。
ボクの夢、誰かに。

自分だけのためじゃない。


届け。
ボクの手、誰かに。

少しでも伝われ別の命の温度。


届け。
ボクの瞳、誰かに。

すくえる痛みがあるのなら。


届け。
ボクの痛み、誰かに。

心やさしくなれるなら。


ボクはボクだけのために、
呼吸をしたくはないんだ。

どこかで今日も、
笑顔がこぼれ、
涙がとけて、
空が青く広がり、
水が澄んで流れ、
地面がいのちを伸ばし、
風がその喜びを揺らす。


その端にボク。
その先にボク。

みんなと同じくらいの、
手と足で生きている。


届け。
ボクのうた、

あなたに。


不思議に自分、
揺らせるように。


〜2008.10.07〜


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29.『屍床の胎動。』

ムラサキの心臓吊された
慰安室に、

巣食うあまたの蝉。

猛々しく反響する
羽のこすりあわせ。


不要なほどの失楽に、
腐敗のやりとり。

それが自然の闇への契約。

たどたどしい舌先が、
乾かぬうちの言い訳は、


粘液となって、
吊された心の出先から、
コンクリートの床に
したたり落ちて。


汗ばむ室温に、
快適知らぬ湿度の恍惚。


密閉された不自然に、
あらがう勇気は、
心房の痙攣。


否定はしない。
かつての優雅な指先が、

ここを頼りにのびていたこと。


だが、
不自然すらも自然に向かう事実を


欠落させてはいないかい?


ごらん。


尿酸しみ込む
その人工床を。


今うごめいているのは、
デオキシリボ核酸の、
正当なる自然の胎動だ。


〜2008.10.07〜


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30.『夢の行方。』

秋空の原っぱの
秘密基地。

段ボールで囲った
プライド。


幼い指の
ひそひそ話。


指令は
セイタカアワダチ草。


街に白い月があがる頃、
ススキがささやく緊急事態。

トップシークレットは
あの子の筆箱。

いつか来る、
折り返し地点の練習。

コオロギがクサムラの匂いなら、

ボクらのひざ小僧は
夢の年間パスポート。


うふふふふ。


心配する両親の顔は、
ボクらのあしたの勲章だ。


〜2008.10.09〜


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