ぃトン詩 集 vol.4_1(1〜15)
『てにてのび』
*ボクが心を込めて描いた大切なモノたちなので
無断で連れて帰らないでくださいねm(__)m
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1.『アスパラ。』
まっすぐにのびゆくミドリ。
天への勇気。
日行き、時行き。
刹那ごと、
集い来る足跡。
風のふれあい。
虫の休息。
巧みに細く、広く、
繊細に空間を遊ぶ親葉は、
せまる輝きに等しく、
伝わるのはやさしい笑顔。
決してよい天候ばかりが、
あるわけではない。
抜けてしまいそうになる風雨、
枯れてしまいそうになる日照り。
けど、
それも含めて、恵みの自然。
その潔さが、
おまえを育て、
空へと、
おまえを向かわせていく。
のびろ。
おまえの中に潜む、
土や鉱物の毒を矯めて、
繊維の典型となるように、
その茎をまっすぐのばせ。
〜2008.06.26〜
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2.『まばたき。』
うずまく葉ひら。
ごっちゃまぜ。
幼葉も病葉も。
町並みに海が重なり、
ビル群にからまる、
ミミズたちの巨大な白い脚。
ボクの刹那。
あなたの刹那。
だれもが心に贖罪をもつ。
この世界にいいわけなどいらない。
自分を生きて澱をたもつ。
その澱に応えていくのが、
まさに作業だボクたちの。
だから、
食らいたい。
ミミズの脚も、
その分泌物も。
嘔吐が去って、
しばらくしてから
訪れる
何かが
自分を先へ押し出す。
〜2008.07.06.〜
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3.『はね。』
夏の朝。
白くはねる風景。
太陽の反射に溶けて、
アジサイが風に乾く。
目がこの世界に慣れるまでの時間は、
貴重な夢の羽化の洲(しま)。
やがて原色が紫外線に浮き、
生きものたちの
糧摘みと狩りが始まる。
いっせいに。
凪と風のさし換えは、
日に二度の約束ごとだが、
朝のそれは苛酷に滲む。
百喜紫光。
この手に辿り着いて、
痛みに果てる。
さぁ、
顔を洗わねば。
この紫たちの霧で。
やがてここから、
予想外の、
七色の蝶が舞う。
〜2008.07.07.〜
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4.『満面のホタル。』
時は一瞬にして闇に馴れ、
浮かび舞い上がる、
満面の発光の淡いミドリ。
愛おしい刹那の点滅。
包まれる歓喜に、
追えない悲しみ。
ただ、
そこにいて。
ただ、
身にまとう愛。
無音のソナチネ。
真水の見る夢。
ぬるく湿り、
さらに清涼へと浮かぶ。
カラダに銀河の摂理。
引きつけあう
顕微の天体。
何も隠さずに、
深い闇を貫き、
白い朝におじぎをしよう。
脱ぎ捨てた衣服の先にも、
おまえは、
屈託なく泊まる。
皮を剥いで、
筋肉を絞り、
骨を見せて、
君たちを迎え入れたい。
泥の匂い。
この稲たちは、
夜、育つ。
〜2008.07.07.〜
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5.『はけないサンダル。』
買い置きのつまさき。
やがて尽き。
昨日買ったサンダルに、
そろえる代えがない。
〜2008.07.07.〜
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6.『色のない虹。』
オレンヂ色の白夜、
色のない虹が立つ。
冷めたコーヒーを
かきまぜた渦の端から。
強引というコトバの意味を
君は考えたことがあるかい?
時には手に手を添える薬。
払いのけたくない魔力を持つ。
意味をなさない深い思慮。
父母の夢。
自我の誤解。
明日になれば忘れがちなしっぽ。
けれどつけねは忘れない。
滲む血の記憶の中に、
ちりばめられた粒の群れ。
リカオンのむさぼる屍肉に、
たちこめる食欲。
大地を揺るがす地震雲が、
途を譲るに余りある、
色のない虹の堂々。
ほら、その立ちもとを、
黒いムカデが狙っている。
〜2008.07.08.〜
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7.『足かけまわり。』
水平な鉄棒に足をかける。
両手で脇をかためて、
一気に下から前に、
カラダを飛ばす。
かけた膝の裏に電気が走る。
肉と皮がひっつれ、
鈍い痛みが走る。
そこが支点だ。
例外なく中心が痛む。
そして、熱を発する。
外に向かうのに、
支点に自分が集まる仕組み。
ノドが渇く。
胸がきしむ。
器官が大脳をつかみ、
思い出が宙に浮く。
母の肩越しに
のぞいた父の背中には
羽根は生えていたか?
自然に手をつないだ
恋人の胸の先には
チューリップは咲いていたか?
三輪車でこけた
コドモの泣き顔と喧騒には
鼻水がほほ笑んでいたか?
見た目には内面が、
内面には世界の事実が、
心臓の鼓動を絡ます。
不器用な回転の先に、
夏の海が、白い呼吸を整えている。
〜2008.07.08.〜
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8.『笑顔。』
朝靄立ち消え、
葉先からこぼれる水滴。
たどたどしい若葉ふるえる。
その初々しい身がまえの先端。
陽の応援のさなか。
弾みき降りた二羽の子すずめ。
周囲を気にせず、
さえずりこける。
その愛らしい動きのはしゃぎ。
おしなべて。
世界はゆるやかに傾斜していく。
サンダルに戻る足先。
つないだ手に手は、
空に向かう。
この地に生えた軌跡。
空からこぼれる、
控えめな笑顔。
ふたたび。
きっといつか、
出会えるね。
まだ見ぬ君へ。
手を広げて。
〜2008.07.09.〜
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9.『斜面。』
斜面に生える草。
四方に根を伸ばすのに、
無理があるおまえが、
真っすぐに空をとらえている。
光に向かいたい、
いつの心で、
潔く、カラダを曲げる。
そこに生えたからだ。
そこ以外に、
自分がない。
だから、
無理を自然につなぐ。
進化。
無意識の美しさ。
他とは違うが、
無自覚の笑顔。
屈託のなさが光る。
世界はいつでも無頓着で、
明日の軌跡に余念がない。
ならば。
おまえが花を咲かす先に、
雨が降り、
同時に陽が差す
虹もあるはずだ。
求めずに咲く、
その勇気に敬意。
そして、
つま先にこそ、
力をそっと入れる。
〜2008.07.14.〜
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10.『機微。』
心に触れる鈴。
すれ違う想いの丈。
機微。
この心の維管束は、
喜も悲も吸い上げ、
気孔につなぐ。
言いたいことがあるんだ。
だから、口を閉ざす。
まだ、気となりに身を添えるには、
異論がわだかまっている。
明けない梅雨に、
抜ける空色。
真実なんて微妙なもの。
些細な行き違いこそ、分水嶺。
潤いが日照りをも
もたらす仕組み。
歩け。
自分の筋肉に意を託して。
雪が芽萌えをもたらす世界に、
自分をひたせ。
ひたすら。
〜2008.07.16.〜
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11.『波となり。』
きょうのじぶん、
あすのじぶん。
そのまえの日に
ひっぱられながらも、
かさなり、洗われる。
ただひろいこのなかで、
この場所は、
誰でもない、
じぶんの居場所。
まわりのうねり、
となりのゆらぎと、
たぐりあい、
さまざまな変化を
とげながらも、
さらりとここで、
じぶんを洗い、
じぶんを現わす。
いたたまれない
たたみかけも、
またたくまの
ななるの星も、
なみなみと
たゆたうからこその、
めぐみであれ。
なにもかもが、
絵としてのこる、
うたであれ。
〜2008.07.16.〜
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12.『とおくに。』
遠国つ中。
夢の奥底。
息づく天使。
生糸の休息。
いずれはわかる。
真意と無垢な手と指。
夜が明るいこの季節。
手折る花などあるはずもなく、
ただその生きるを見つむ。
気位の高い女王蜂とて、
あまたの蜜蜂の先には愛なく、
愛の等式は、
満月の輪光ほどに、
刹那く、たどたどしいもの。
この世界での
歪みも憎しみも、
すべて円に焦がれる天体。
意識せぬ一歩も、
意識した一歩も、
等しく波のひと立ち。
許容を絶やさなければ、
きっと明ける夜がある。
〜2008.07.17.〜
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13.『言きらめき。』
突然、
大粒の雨滴、
直線の無数の弾丸。
とらえた大地が、
一瞬にしてひき締まり、
すべてが色をなくす。
安堵の床に落とされた
鉄の玉は五感に響きわたり、
不文律の恐怖ともない転がる。
雷鳴。
とめどなく。
はかりしれず。
ハラワタの底から、
遺伝が沸き立ち、飛び出す。
いさぎよく!
全裸で受けとめる。
そして、
誰よりも先に、
高らかに笑うこと。
閃光のただなかで。
予期するあざやかな色のもどり。
はつらつたる生の希望を。
両手を天にあげきり、
ふり返る。
笑顔ともない言い放て。
つゆ明けだ。
〜2008.07.18.〜
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14.『月のび。』
小望月には、予感。
満月には、実感。
月にかかる自分の右足。
錯覚の正円、
その輪郭をすべり、
地上に殴打した踵。
苦痛にゆがむ表情よりも、
鈍い痛みは指先を伝わり、
指し示す彼方には、
無数の名もなき星の群がり。
どこへ。
垣間見る惑星の衝突。
流れ消えるあとかた。
このカラダ中でアニマがたぎり、
その銀河を細胞へと閉じ込める。
思い上がりだ、おまえの。
いつまで痺れたその指先を、
広げておくつもりなのか?
しまえ、手足を。
そして見えない触手をつちかい、
空気の隙間を気遣え。
きっとそこに、
産まれたての新月が、
声なく産声を描いているはずだ。
〜2008.07.21.〜
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15.『夏のとまと。』
森に浮く楕円。
オレンジないびつ、
ひとまたぎ。
闇の巨人の喉仏。
鳴らない鍵盤に巣食う音の蟲。
夜曲。
魔笛よろしく。
知っていたんだ。
おまえはね。
こうなってしまうことを。
悪魔がささやく連弾。
それも、
この世界には、
「あり」だということを。
負けではない。
もちろん勝ちでもないが、
もう、
そんなことはどうでもいい。
些細な悪意のダジャレには、
つきあう洲(しま)もない。
育てたい。
夏のトマト。
皮の丈夫な、
水気のすがしい、
憧れの結実。
歯を立てた残り香が、
明日の少年の夢をのばす、
いちずな球体の果実を。
これが、
まだ見ぬあなたへの、
ボクからの贈り物と、
なりますように。
やがては、
森の上の、
藍色の中に、
くっきりと浮かぶ、
凛々しい「しるし」と、
なりますように。
〜2008.07.23.〜
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